【対談】梨本卓幹×宮里倫史『対談で伝える「響鳴」の魅力』第2回:考え抜かれたプログラム

2019年11月2日開催の「梨本宮里ピアノ・デュオ Contemporary Piano Duo Concert -響鳴-」を記念し、掲載しているこのスペシャルコラム。前回は我々デュオの結成秘話をお届けいたしましたが、続く第2回ではデュオの相方宮里倫史(もとし)くんと今回のプログラムについて語っていきます!

ひとつじゃない、現代音楽

梨本「それでは宮里くん、今回もよろしく!さっそくだけど、このマニアックなプログラムの並びについて語っていこう笑」


〜今回のプログラム〜

・ライモ・カングロ:Klimper Op.40-4
・デュティユー:響きの形

・ヒンデミット:2台ピアノのためのソナタ

・川上統:越前海月(2019年改訂版)

・ウルマス・シサスク:The Spiral Symphony



宮里「マニアック笑 まぁ、そうだよね。前の記事でも触れたけど、現代音楽って一言に言ってしまう割に実は100年くらいの幅があって、100年もあればいろんな曲が生まれる。一括りにされがちな「現代音楽」の様々な面を見せられる曲を選んだ結果、こういうバラエティ溢れるプログラムができたって感じだよね。」


梨「こんな感じ?

・響きというものに注目して作曲されたデュティユーの《響きの形》

・銀河を題材とした宇宙の響きを持つシサスクの《The Spiral Symphony》

・生物という身近なもので、だからこそ神秘を感じる川上統氏の《越前海月》

・そういった抽象に対する具象、構造が持つ響きの美しさを表したヒンデミットの《2台のためのソナタ》

・そしてそれら響きの祭典への序曲的なカングロの《Klimper》

どう?」


宮「かっこよくまとめたなぁ笑 シサスクとデュティユーは藝祭(東京藝術大学の学祭)のコンサート以来の再演になるね。ただ藝祭のときシサスクは抜粋だったから、今回全曲通して演奏できるのが嬉しい。シサスク本人とも会っているだけに、この曲集の全曲演奏は悲願だったからね」


梨「そうだね。僕が内部奏法ってものに初めて出会って取り組んだのが、このThe Spiral Symphony。ピアノの内部を手で触れるワクワク感とかドキドキ感というものが最初はあったんだけど、やっていくうちにそれだけではない内部奏法の奥の深さみたいなものに気付いて。効果的に鳴らすには弦のどの部分を抑えたらいいか、どう叩いたらいいか、っていう普段普通にピアノを弾いているだけでは思いつきさえしないことと考えているよ笑」


宮「シサスクもカングロも、川上さんの曲も、内部奏法をするときは立ったり座ったりっていう動作があって、見てても面白いんじゃないかと思う。そこまで派手ではないけど、デュティユーでも音を出さないように鍵盤を押さえる奏法が出てくるね。相手のピアノの音を響かせるために。」


(▲左から梨本、ウルマス・シサスク氏、宮里)


異なる道から新しい響きを求めて

梨「そう、その"共鳴"を匠に使って曲を作ったっていう点が、初めて聴いた時にほんとに感動したんだよ。ピアノのレッスンのときとかに、隣で先生が弾いた音が自分のピアノに残ってしまうっていう現象、ピアノを学ぶ多くの人が経験することだと思うんだけど、そこに注目するのかって。デュティユーはレッスンから発想を得たわけではないと思うけれど笑 その科学的な現象を音楽として扱ったっていう点が、この曲においては聞き所じゃないかなぁ」


宮「たしかにね!あの"共鳴"の使い方は1台のピアノじゃできないことだし、1台しか弾けない環境にあったら絶対に気付けないと思う。デュティユーってこだわりが凄く強かった人みたいで、若いときの作品をほとんど放棄してしまっているんだよ。生涯で作曲した数も少なくて。でもだからこそどの作品を見ても彼のそのときの考えやこだわりがとても表れているっていう印象がある。だからこそ、現代音楽において独自の路線を貫けたんだろうな。」


梨「そういう意味ではヒンデミットも職人ぽいよね」


宮「そうだね、ただヒンデミットは時代も違うしデュティユーとは正反対の位置にいるとも言えるけれど。今回のデュティユーの作品は音響現象そのものの面白さに着目しているのに対して、ヒンデミットは昔からある音楽形式自体が持つエネルギー、そしてその可能性を追求した人だから。」


梨「この2台のためのソナタでも、二重フーガや完全カノンっていう、入念に練られた構造があるね。もちろん音使いはバッハの時代とは違うけど、でもその頃から受け継がれた緻密な計算による形式美って感じだろうか。最終楽章の濁流のように折り重なるあのフーガは本当にアツい!」




音から感じるこだわりを共鳴させる。

宮「越前海月は君が見つけてきた曲だけど、どうやって見つけたんだい?」


梨「実はさ、僕が高校生のとき、うちの高校(東京音大付属高校)でこの曲の作曲者である川上統さんがアナリーゼ(楽曲分析)を教えててね。授業中先生の作品の話とかを教えてもらってたんだよ。他にもいろんなところで川上先生の作品を演奏する機会があって、そのどれもが演奏していて楽しいし、更に聴衆の人気も必ずといっていいほど高い。そんな中、ピアノ・デュオの作品はないかを先生に聞いて教えてもらったのです!」


宮「そうだったのか!いやぁ、あの曲、読み進めるにつれて、いかに音の細部へこだわっているかが分かっていくんだよ。」


梨「あの音の重なり方とか、リズムの使い方は、是非生で聴いてほしいよ。やっぱり、アコースティックな音楽は生で聴いてほしい。その場でしか聴こえない音っていうのが確実に存在すると思う。」


宮「そうだね、カングロのあの爆発的なパワーといい、デュティユーや川上さんの繊細な音の重なりといい、シサスクの宇宙を感じるあの独特な音使いといい。」


梨「その中で堅くどしっと存在するヒンデミット、というのも、この流れで聴くからこそ感じるものがあるはず。いやぁ、楽しいプログラムだよ我ながら!笑」


宮「今回のタイトル『響鳴』は、こういう5つのそれぞれの世界観、響きをお互いに共鳴させ、響かせる。って意味だからね。会場に来てくださる皆さんとも共鳴できたらいいと思います。」


梨「それ言いたかったのに〜!!笑」






はい、というわけで、コラム第2回の今回はプログラムの内容について深く触れました。実はまだ続きます。次回、次次回は、スペシャルゲストをお迎えして更にプログラムについて語ります!お楽しみに!




梨本宮里ピアノデュオ Contemporary Piano Duo Concert 『響鳴』

*日付 *

 2019年11月2日 14:00開演 (開場13:30)

*会場*

 公園通りクラシックス

 (東京都渋谷区宇田川町19-5 東京山手教会B1F)

*チケット*

 [全席自由] 前売り:3000円、当日:3500円

*プログラム*

 ・ライモ・カングロ(Raimo Kangro) : Klimper Op.20 No.4*

 ・デュティユー(Henri Dutilluex) : Figures de résonances

 ・ヒンデミット (Paul Hindemith): 2台のためのソナタ

 ・川上統(Osamu Kawakami) : 越前海月 (2019年改訂版)**

 ・ウルマス・シサスク(Urmas Sisask): The Spiral Symphony

    (*日本初演  **世界初演)


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梨本宮里ピアノ・デュオ

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梨本卓幹

1995年長野県千曲市に生まれる。
幼少の頃よりヤマハ音楽教室にてピアノと作曲を学ぶ。東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏家コースを特待奨学生として優等賞で卒業。その後東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻を卒業し、現在はハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽院の修士課程に在籍。Stipendium Hungaricum奨学金生。
TrioRoppi、梨本宮里ピアノ・デュオ、市川市文化振興財団フレッシュアーティストバンクに所属。
これまでにピアノを松橋千恵、武沢洋、篠井寧子、斎藤雅広、西川秀人、岡田敦子、横山幸